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戦うことに意味はあるのか [増補改訂版] ――平和の価値をめぐる哲学的試み――

  • 佐藤香織・遠藤健樹・横地徳広 編著
  • 四六判・334頁・並製
  • 定価 2,750円(本体価格2,500円+税)
  • ISBN 978-4-910425-04-7
  • 発行 初版第1刷2023年2月24日
       初版第2刷2023年6月30日

<編集者イチオシ!>

 『戦うことに意味はあるのか-倫理学的横断への試み』(2017)の増補改訂版が、収録論文を大幅に入れ替え、装いを新たに出版されました。今回タイトルの「戦うこと」に、新たなサブタイトルの「平和」という言葉を対置させたことで浮き彫りになるのは、複雑に絡み合った「闘争」と「共生」の関係性です。本書は古代ギリシャから20世紀の公民権運動に至るまでの様々な思想や歴史的な出来事に言及しながら、「戦うことの意味」と「平和の価値」を丁寧に問い直していきます。
 「戦い」、「連帯」、「対話」、「愛」といった鍵語を頼りに本書を読み進めていく中で、読者は、ロシアのウクライナ侵攻が現実となり戦争が常態化しつつある世界に、ひとりの人間としてどのように対峙し生きていくべきかについて深く考えさせられることになるでしょう。


(担当編集員:澤田 真一)

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内容紹介

 「自分は人間だ」と思えなくなってしまう状況を経験したことがあるだろうか。
 ……戦場や全体主義、差別がその例かもしれない。
 とはいえ、ひとは、みずからの命をかけて子供たちや住まいを守り、あるいは自身の自由を求めて戦い、このようにして自分が人間であることを手放さない――少なくとも、そうした人びとがいる。この戦いこそ、自分は人間であることの証であるかのようである。
 「自分が人間だ」と思えないその渦中でみずから戦うときにむしろ、自分が人間であることとその意味を肌身で感じとりえてしまう複雑さ、ここに哲学的問題がある。
 だとすれば、平和とは、一体、何か。
 人間が人間でありうる平和とは何なのか。
 本書が、読者のみなさんがこうした思索を引き受ける一助となれば、幸いである。

・シリーズ
生きることに責任はあるのか―現象学的倫理学への試み―
戦うことに意味はあるのか―倫理学的横断への試み―
見ることに言葉はいるのか――ドイツ認識論史への試み――

目次

序 章…増補改訂版への衣替えについて(横地徳
    広)
第1章…誰が死ぬのか――ポレモスとオイコスを
    めぐる試論(信太光郎)
第2章…終末論と政治闘争――エリック・フェー
    ゲリンとカール・レーヴィットにおける
    アウグスティヌス受容(遠藤健樹)
第3章…無へと向かう日常的共同の気遣いについて
    ――エックハルトと超越論的ハイデガーの
    あいだで(横地徳広)
 コラム1…正戦論と永遠平和論――中世からカン
      トへ(宮村悠介)
 コラム2…もうひとつの永遠平和論――カントか
      ら二十世紀へ(宮村悠介)
第4章…ホッブズ的人間のゆくえ――人格の倫理学
    のために(宮村悠介)
間 奏…人間、価値、世界――序章を補いつつ(横
    地徳広)
第5章…ラルフ・W・エマソン「偉人の効用」――
    『代表的人間』所収、訳と解題(佐藤香
    織)
 コラム3…フランツ・ローゼンツヴァイクと第一
      次世界大戦――『ヘーゲルと国家』か
      ら『救済の星』へ(佐藤香織)
第6章…「戦争」に先行する「平和」――レヴィナ
    ス『全体性と無限』における「平和」概念
    の二義性から(佐藤香織)
第7章…米国公民権運動と新たな日常的共同――政
    治学とは別の仕方で(横地徳広)
終 章…戦うことの是認?――「戦うことに意味は
    あるのか」という問いについて(遠藤健
    樹)
 あとがき