子の監護権紛争解決の法的課題 ―弁護士実務の視角から問う―
- 渡辺義弘著
- A5判・251頁・並製
- 定価 2,409円(本体価格2,190円+税)
- ISBN 978-4-902774-85-6
- 発行 2012年4月6日
内容紹介
震災は共生社会の志向を生んだ。しかし、進化した生存競争は個人の孤立化を深く静かに加速させた。若い世代の夫婦関係破綻による子どもの監護権獲得紛争が多発かつ深刻化している。本書は在野の弁護士の視角から、紛争解決の理念問題と、司法官庁の業務遂行を主眼とする「役所の論理」の克服とを訴える。「子の福祉」の理念は、市民レベルでの国家に対する信頼感が喪失している時代には機能しない。子の権利の確立と並行して、親が人間の本能として子を求めるリアルな実態を手続論に反映させる必要がある。新家事事件手続法が立法外とした意思能力なき未成年子の「子ども代理人制度」の必要性、ハーグ子の奪取条約への加盟の是非、調査官調査のブラックボックス現象の克服、利用者のための子の引渡強制システムの確立、破綻夫婦による子の共同監護権論の光と影など、「市民の論理」に基く、家族法手続論の再検討に、筆者は本書によりささやかな挑戦を行った。
・関連書
『高葛藤紛争における子の監護権―弁護士実務の視角から法的課題を問う―』
目次
はしがき
第1章 子の監護権手続論の最新局面
第1節 子ども代理人による三面関係の手続
保障
Ⅰ はじめに
Ⅱ 親の視点からの子ども代理人必要論
Ⅲ 子の視点からの子ども代理人必要論
Ⅳ 比較法的視点による動向
Ⅴ 手続保障における三面関係の必要性
Ⅵ 結 語
第2節 ハーグ子の奪取条約への態度決定
Ⅰ はじめに
Ⅱ 欧米先進国からの締結要求
Ⅲ 条約の構造
Ⅳ 国内法制との軋轢
Ⅴ 日弁連意見書の問題点
Ⅵ 締結問題への態度決定
Ⅶ 結語
第2章 子の引渡手続論の課題―利用者のための
引渡強制システム―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 直接強制の定着による様相の転換
Ⅲ 審判前の保全処分の整備状況
Ⅳ 人身保護法請求との二本立てのあり方
Ⅴ 結語
第3章「調査ブラックボックス」現象の克服―調査
官調査に対する手続保障―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 調査官をめぐる情勢
Ⅲ 家裁調査官のアイデンティティーの形成
Ⅳ 「ブラックボックス」現象克服の問題点と
方策
Ⅴ 結語
第4章 共同監護・面会交流論
第1節 共同監護論の光と影
Ⅰ はじめに
Ⅱ わが国における共同監護論台頭の原因
Ⅲ 比較法的な監護実情の近似点
Ⅳ わが国の家裁実務における人間科学の教条
主義的支配―ゴールドスタイン学説から
ウォラースタインのデータ解釈への転換―
Ⅴ ウオラースタインの研究成果の
ドキュメント・「離婚、親の愛を失った
25年の軌跡」
Ⅵ 梶村説の評価
Ⅶ 解決の方向
Ⅷ 結語
第2節 別居夫婦間の面会交流紛争解決の模索
Ⅰ はじめに
Ⅱ 別居夫婦間の面接交流紛争の現実
Ⅲ わが国における面会交流権論の潮流と現状
Ⅳ 別居夫婦間の面会交流紛争解決の方向性
の検討
Ⅴ 結語に代えて
第5章 子の監護権紛争をめぐる課題と実践
第1節 子の監護・引渡をめぐる紛争の法的解決
の今日的課題
Ⅰ はじめに
Ⅱ 人身保護法による救済を復活させる需要
Ⅲ 審判手続と審判前の保全処分の実効性の
検討
Ⅳ 結語
第2節 審判申立ての実践例からの教訓
Ⅰ はじめに
Ⅱ 事案の概要
Ⅲ 家裁出張所の抱える問題
Ⅳ 審判前の保全処分をめぐる諸問題
Ⅴ 即時抗告審による逆転
Ⅵ 差戻審における問題点
Ⅶ 本案審判までの道程
Ⅷ 急転直下の解決
Ⅸ 結語に代えて―本実践例からの示唆と
教訓―
終章 子の監護権紛争解決手続に関する私見の総括
Ⅰ 理念におけるアンチテーゼ
Ⅱ 「役所の論理」から「市民の論理」へ―制度
と手続のあり方を弁護士実務の視角から
問う―