華岡青洲の「誤算」 その史実と背景
- 松木 明知 著
- B5判・192頁・並製
- 定価 3,850円(本体価格3,500円+税)
- ISBN 978-4-910425-22-1
- 発行 初版第1刷 2025年10月10日
<編集者イチオシ!>
歴史上の著名人の業績は、新たな文献の発見により時に大きく書き換わりその評価がガラリと変わることがありますが、最近では特に人物像にも焦点が当てられ、その魅力が歴史ブームや大河ドラマの人気に表れているように感じられます。
華岡青洲は、江戸時代に世界で最も早く全身麻酔下で乳癌手術を行った外科医と言われています。本書には、青洲に関する文献写真がふんだんに盛り込まれ、さながら歴史研究家になったような気分を味わいながら、全身麻酔法が開発されていく過程を辿ることができます。そして、その過程で青洲の人柄だけでなく様々な困難や成功の折に触れ彼が抱いた感情をも想像することができるでしょう。これは、麻酔科医として活躍され、長年に渡り青洲研究に携わられている松木明知先生の著作だからこそです。
(担当編集員:渡邉誠二)
一般の書店にてお求めいただけます。(各書店にご注文ください)
弘前大学生協インターネットショッピングにてお求めいただけます。
内容紹介
華岡青洲は19世紀の初めに全身麻酔法を開発して外科手術を行い、難病に苦しむ多くの病人を救った。従来の青洲の伝記は輝かしい面のみが強調されている。このために多くのフィクションが生まれた。しかし輝かしい業績の陰に多くの失敗や挫折があったことを忘れてはならない。失敗や挫折は青洲が予想もしていなかったことで、青洲にとっては「誤算」であった。この書は青洲が経験した「誤算」に対して、いかに対処して困難を乗り越えたかを述べたものである。陽の当たる部分のみを観るのではなく、陰の部分にも光を当てることによって本当の青洲の姿を明らかにした。
目次
はじめに
謝辞
凡例
Ⅰ最初の京都遊学― 常の師なし 1 鈴木蘭園の講義 2 『丸散便覧』の執筆 3 『漫遊雑記』と乳癌
Ⅱ 麻酔薬の混乱 1 全身麻酔薬の模索 2 マンダラゲと附子 3 「通仙散」の怪
Ⅲ 母於継の失明と死 1 再上洛の意義 2 於継の失明 3 長女小弁の誕生と死
Ⅳ 藍屋 勘の死 1 難病としての乳癌 2 宿願の乳癌手術 3 勘の死の衝撃
Ⅴ さらなる衝撃― 乳癌の再発 1 重助の妻― 最初の再発 2 さらなる再発 3 最善の対策
Ⅵ 識者からの称讃 1 菅 茶山の漢詩 2 杉田玄白からの書簡 3 大槻玄澤の慧眼
Ⅶ 長男葛城の死 1 待望の長男誕生 2 華甲の宴 3 度重なる家族の不幸
Ⅷ 著述の混乱 1 著述と出版に対する青洲の態度 2 本間玄調による『春林軒二十一種』の撰定 3 佐藤持敬の『華岡氏遺書目録』
Ⅸ 「医則」の誤算 1 「内外合一」の誤解 2 「活物窮理」の誤解 3 「方無古今」の出典
Ⅹ 華岡家 3 代の誤算―杉田家 3 代との比較 1 華岡家の 3 代 2 杉田家の 3 代
Ⅺ 伝記の編纂と誤謬の普及 1 『華岡青洲先生及其外科』執筆の背景 2 『医聖 華岡青洲』による謬見の増幅 3 小説『華岡青洲の妻』の影響
おわりに
参考文献
著者による青洲関連の著編書と2015年以降の論文
索引